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車椅子と道路交通法 ~規制緩和への道①~

現在障害者を取り巻く環境は改善の方向へ進みつつあり、障害者の社会進出に向けて各方面のご理解をいただいていることは、私達障害者にとって大変ありがたいことであります。

しかし、日本の道路における車椅子での移動は、現在でも大変困難な状況であり、車椅子を使わざるを得ない障害者にとっては、通常の歩行者と同等に移動を行う自由は得られていない状況です。

世界に目を向けると、電動車椅子そのもの、または車椅子の補助的に使用する電動補助機の利用は、近年目覚ましい発達を遂げており、車いすユーザーの移動は飛躍的に容易になってきています。

しかし、日本ではその様な発展はほとんど見られず、既存の電動車椅子に準ずるもののみを使用し、依然として車椅子での移動は困難を伴う状況が続いています。

日本における車椅子の移動手段の発展が皆無である原因の一つに、道路交通法の規制が世界基準の電動車椅子や車椅子補助器具に適合せず、電動車椅子の公道での使用が制限されていることが挙げられます。

道路交通法の規制が、障害者にとって世界の車椅子ユーザーと同等の活動を行う事を制限しているだけでなく、日本における電動車椅子や車椅子補助装置の発展をストップさせている要因になっていることは否めません。

では、何のための規制なのかということを考えると、当然通常の歩行者等公道を使用する他者の安全を害することが無いようにする為の規制であると考えられます。

ある程度の規制は当然であり、無制限に規制を緩和することは、障害者の移動の権利を得ることとは異なるものです。

しかし、現在の道路交通法の制限は、明らかに旧来の電動車椅子を意識したもので、その後に世界中で開発され、使用されている新たな電動車椅子や車椅子補助装置に対応出来ているものではありません。それらの新たな製品の中には障害者が移動の自由を広げ、かつ通常の歩行者の安全も損なう事の無いものも存在しており、その製品の使用を日本の障害者が切望している状態なのです。

仮に現行の道路交通法のまま変更をしない状態が続くと、世界で認められた障害者の移動の権利と、日本におけるそれとは乖離していく一方で、道路交通法が私達障害者の権利を侵害していく状態に陥っていく事は否めません。

​2020年東京オリンピック、パラリンピックに向けて世界の車椅子ユーザーが日本を訪れる中、海外の車椅子ユーザーが持ち込む安全な電動車椅子や車椅子補助装置は、多くが道路交通法違反となる恐れが生じ、早急の改善を必要とする状態なのです。

現在の道路交通法における規制を見てみましょう。

電動車椅子の基準

あ 「長さx幅x高さ」の上限(超えない)

  120x70x109センチメートル

い 車体の構造

  ア 原動機

  電動機を用いる

  イ 速度

  時速6㎞毎時を超える速度を出すことができない

  ウ 突起

  歩行者に危害を及ぼす恐れがある鋭利な突出部がない

  エ 識別の明確性

  自動車・原動機付自転車と外観を通じて明確に識別することができる

う 個別的な緩和措置

  身体の状態により上記規制に該当しない車いすを用いることがやむを得ない場合

  →警察署長の「確認」を受ければ適法(歩行者扱いを維持)となる

*道路交通法2条1項9号、10号、11号の2、施行規則1条の3

まず大きさの基準ですが、長さ、幅、高さ共に日本の既存の電動車いすを意識したものと思われます。

長さは、最近世界中で使用されている手動式車椅子に取り付ける牽引型の電動補助装置の使用はほぼ不可能ですし、障害の程度によっては体の保持に必要な傾斜した姿勢をとることも難しいものとなっています。

幅は道路の傾きに耐えるために必要な十分な幅を備えず、肩幅プラス左右10cm程度の幅しか認められていません。その為、車椅子と身体を含めた重心に対してひどく縦長なバランスとなり、歩道の傾きなどで怖い思いをすることも多いことでしょう。また新たに海外で見られるようになってきた自立型の電動車椅子は2輪で、走破性や安定性を高めるためには70㎝幅を超えるものも多いです。

高さに関しても将来期待されるスタンドアップ式の車椅子、つまりすべての車椅子ユーザーが望む、歩行姿勢に近い状態での移動を可能とする車椅子の開発の妨げになっていることは確かです。現在でも車椅子生活での目線の低さを解消する為のスタンディング姿勢で移動できる電動車椅子も見られるようになってきましたが、厳密にいうと高さの規制に適合しないものとなります。

速度に関しては、一度時速4kmから6kmへ緩和されていますが、移動手段として車椅子を使用する場合は、明らかに速度が不足しており、移動に時間がかかりすぎて困っているというのが現状の思いです。

つまり、通常歩道の移動は時速6㎞で十分なのかもしれませんが、数キロ先へ移動したい時には、自転車の様なものとして移動したいと思うのは当たり前です。

しかし、私達は自転車に乗れず、かつバスやタクシーを使うにも予約や事前連絡が必要であったりと健常者と同じように容易に移動することができません。

世界では電動車椅子自体のスピードを上げたり、手動式車椅子に様々な牽引装置を付けることで、障害者の活動範囲を飛躍的に広げることが可能になっています。

現在の日本の法令下では、電動車椅子または手動式車椅子補助装置は自転車道を利用した移動は認められていません。時速6kmを超える場合は、自転車道の利用が可能になれば、飛躍的に車椅子での移動範囲は広がり、移動時間も短縮できます。日本以外では認められていることなので、電動車椅子や手動式車椅子補助装置の開発は、海外では飛躍的に進み、日々新しい製品が市場へ投入されています。

日本では、そもそも時速6㎞以上出すことができる製品は車椅子として認められていませんし、大きさや高さの制限で、新しいモビリティとしての車椅子の開発は皆無となっています。

この分野で日本の技術力が全く活用できない状況は、非常に残念です。もし日本がこの分野に進出出来れば、世界をリードする製品が生み出される可能性は高いと言えるでしょう。

車いすは私達下肢障害のある者にとって、まさに足です。足である限り、歩いたり走ったりしたいのは当たり前です。車いすそのものに速度の制限をするということは、健常者の足で走ったり自転車をこぐことを禁止するのと同じことです。歩道以外で、ときには風を感じたり、ランニングしたり、自転車で素早く移動する、そんな当たり前の自由を認めて頂きたいのです。

日本でも障害者が風を切って、笑顔で活動する姿を見られる社会を作りたいのです。

具体的には、速度の制限は製品にかけるべきではないということで、それは自動車や自転車を見れば明らかです。

車椅子は公道を走るだけのものではなく、今や自然の中や遊歩道、サイクリングコース、広場などへ出かけ、自転車並みの移動が可能な障害者の足なのです。障害者は場所や目的に応じて容易に車椅子を乗り換えるということができません。ですがマルチな目的で使える製品は、世界では既に使われています。

また、障害者でもPTOに合わせて車椅子の速度を調整する能力はあります。

製品に対する速度の規制を無くすことが他の歩行者への危険となるとは到底考えられません。

製品の速度規制は撤廃しても、歩道の速度規制は時速6kmのままでよく、電動車椅子や車椅子補助動力の使用が自転車として認められれば車椅子の移動範囲は飛躍的に広がります。

電動車椅子の大きさの制限も、目的がはっきりわかりません。私達車椅子ユーザーは必要以上に大きな車椅子にするメリットは何もないのですから。

安定を得るための幅や、歩行姿勢に近い状態での移動を可能にする高さや、手動式車椅子の活動を広げる電動牽引装置を付けるための長さを認めて頂きたいだけなのです。

今の規則を少しだけ緩和することで、電動車椅子の選択や設計の自由度は広がり、間違いなく車椅子ユーザーの生活は改善され、行動範囲は飛躍的に広がります。障害者の社会進出の大きな手助けとなるのです。

東京パラリンピックの時には、海外の選手に日本の車椅子生活の現状を笑われないような社会になっていて欲しいです。

いずれにしても世界中で進む電動車椅子の進化に、日本だけが取り残されつつあるのは確かなようです。

これらの写真の製品は、日本では公道の走行が認められない、もしくは警察署の認可が必要な物です。みなさんどう思いますか?


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