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車椅子利用者におけるマイクロモビリティの利用促進に向けた意見書




最近、電動キックボードなど新しい移動手段についての記事や、規制緩和に向けた意見交換などを目にすることが多くなりましたね。

実はマイクロモビリティの活用で、一気に移動範囲が増えて、その恩恵を受けることが出来る可能性があるのは、車椅子利用者だって知ってますか?

既に海外では、マイクロモビリティと車椅子をセットで活用して、車椅子利用者自らが移動することで、車椅子の行動範囲の拡大や社会活動への参加促進など、車椅子利用者は大きな恩恵を享受できているんです。

今回、車椅子利用当事者として警察庁などへ意見書を提出して、車椅子利用者のマイクロモビリティの活用の議論を深めたいと考えています。

皆様のご意見も頂ければ、より良い提案が出来るのではと思います。ご意見お待ちしております。



車椅子利用者におけるマイクロモビリティの利用促進に向けた意見書



現在、マイクロモビリティ活用に向けた実証実験や、規制緩和に向けた検討が行われている中、車椅子利用者のマイクロモビリティを利用した自立支援や行動範囲の拡大に対しては意見が出ていないことには危惧を抱いております。

 実は、マイクロモビリティの活用で、その最大の利益を受けられるのは車椅子利用者であるといっても過言ではないので、是非規制緩和の際は、車椅子利用者のマイクロモビリティの活用も念頭に議論いただきたいと思います。


現在の状況

 既に海外では、5年以上前からインホイールモーターを用いた車椅子用電動アタッチメントが活用され、車椅子利用者が健常者と同じように行動範囲を広げて、自立支援の恩恵を受けている状況がある。日本国内の障害者のみ、その恩恵を受けられず、世界的に普及している電動アタッチメントの製品が国内に皆無なのは、道路交通法と車両規定の弊害が生じている状況と言える。


 手動車椅子利用者の日常的な行動範囲は半径100m以内とも言われ、その範囲に職場や商業施設、また、バス停留所や駅がある人は数少なく、都市部郊外やいわゆる田舎では、より外出が困難な状況である。また都市部でも公共交通機関の混雑時の利用困難や、駅の利用時間が普通の利用者より大幅にかかることなどから、インフラの整備だけでは車椅子利用者の利便性向上は乗り越えられない壁があるのが現実と言える。


 それらの問題を考えた時、解決に向けて一歩進むことができるのが、車椅子利用者のマイクロモビリティの活用である。

 普段使用している車椅子に電動アタッチメントを取り付けることで、行動範囲は数十倍に広がり、公共交通機関やタクシーに頼らなくても自ら好きな時に移動の自由を享受できる。移動先で自由に取り外せることも大きな利点である。

現状の電動車椅子規定では、移動速度が遅すぎて移動に時間がかかり過ぎ、行動範囲はあまり広がらない。特に移動において距離が必要な郊外では移動手段とはならない。また、普段手動式車椅子を利用している者にとっては、電動車椅子は使い辛く、乗用車を運転できる者にとっては車に自ら積み込み事が出来ないので、移動先で利用できない。など、外出手段としての現状の電動車椅子の利用はメリットが少ない。


規制の緩和に向けて

 車椅子利用者にとって理想は、車椅子用電動アタッチメントの歩道での利用と、併せて自転車道の利用ができれば、行動範囲は飛躍的に広がる。更に免許保有者は、原付として利用ができれば、移動距離は更に広げることができる。バスやタクシーを利用することなく自ら動くことで、社会への参加が促され、インフラ整備の必要性は少なくなっていく。

 具体的には、走行場所によって速度の規制を用いて現在の公道利用状況に合わせていくのが良いと考える。

 速度の規制は、歩道は6~10㎞/h以内、自転車道は15㎞h~20㎞/h以内、郊外ではナンバーを付けた状態で免許所有者は車道で30㎞/h以内、の様に速度の規制によりエリア分けを行うのが最適と言える。電動アタッチメントにはスピードメーターを義務付け、速度の認識が取れる製品に限り、速度制限を設けることで利用者は速度の調整の義務を負う。

スピードリミッターを設定することは比較的容易だが、現在のインホイールモーター式の電動器具は、リミッターを用いることで出力の制限が行われ、登坂能力や走破性が大幅に落ちる危険があり、メーカーも出力制限を推奨していない。というのも、車椅子利用者は車椅子から降りることはできず、足を出して後退を防ぐこともできない。坂道の途中や未舗装路で車体が止まった場合、動けなくなる危険性があるのが健常者と異なる点で、緊急的にモーター出力を上げる必要があり、製品のモーター性能を100%利用できる方が安心して利用できる。

 障害者でも、健常者の自転車利用と同じく、地域の交通状況に合わせてスピードや走行場所を選択できる能力があり、公道を移動する自由と引き換えに責任が生じるのは当たり前のことと考えられる。法定速度を大幅に超える能力を有する自動車が販売され、実質速度無制限状態の自転車の利用状況を考えると、公道での走行はあくまでも運転者自身が周囲の状況に合わせ、また法規を守ることで成立していると言える。なぜ車椅子利用者のみ歩道で6㎞/hしか出ない製品の利用制限がかけられているのかは理解できない状況である。


 海外で利用されている車椅子用電動アタッチメントは、そのまま屋内での利用も可能なコンパクトなものが多く、歩道走行、または、自転車道での走行において他者に迷惑をかけるものではない。移動速度や距離を重視した製品は、車輪が大きいモデルもあり、自転車と同等に利用できる。ブレーキや前照灯などの安全装置も、走行のスピードに合わせて装備され、CEマークなどの欧州基準を満たしたものが殆どで、日本の公道でのみ利用に問題がある製品が多いとは考えられない。

海外ではナンバーを付けて走行する事例は見られないが、特に混乱は生じていない状況である。日本での利用は、交通量の少ない地域では時速30㎞以内で、10㎞~20㎞程度の移動を想定した方が、通勤や通学、買い物を自力で行うことが出来る。現状ではナンバーと免許が必要になるであろうが、車道より自転車道の利用が安全と考えられる。なので、交通の状況で危険を感じた時には、速度を落として歩道や自転車道へエスケープが可能な方が安全である。ナンバー付きの原付だからと言って車道に限定したり、2段階右折を禁止したりすることは、利用者を危険な状況に強制することになるので、柔軟な利用を考える必要がある。

車椅子利用者は歩行者として徒歩で電動機器を押して歩くことはできない。エスケープした場合、ナンバーをどうするかは議論するまでもなく、隠した方が良ければ隠せば良いと考えられる。それよりも、歩道走行可能ナンバーを新設すれば、違反を防ぐ効果があり、違反者の把握も容易であると思われる。掲示位置も身体の一部である車椅子ではなく、特例で前部に掲示するなど柔軟な対応が望まれる。ナンバーがあるから車道以外禁止、としか考えられない状況が利用者を危険に追いやり、新しい車椅子用モビリティの開発や利用を妨げている要因ではないかとも感じている。


ナンバー付きを考えず、時速20㎞以内に限定して歩道と自転車道のみの利用を考えるのも一つの手である。その場合でも、現状を考えると大幅に行動範囲は拡大する。

また、車椅子は車両ではない。障害者が常に必要とする補助器具であり、健常者の脚部と同じと考えていただきたい。つまり車両は電動アタッチメント部分のみであるというのが車椅子利用者の感覚である。車椅子にナンバーつけても良いが、そのために歩道が利用できなくなるのは利便性や安全性から本末転倒である。


 日本において、海外で認められている新しい機器を利用した車椅子利用者の移動の自由が、日本国内のみ規制により妨げられているのは、大きな問題である。海外と比較すると、10年近く車椅子利用者の移動の自由は遅れており、車椅子利用の海外からの移住者や、観光客は、その自由を日本において享受できない。また、車椅子用電動アタッチメントなどの移動用製品開発は皆無である。

また、現在行われている電動キックボードのレンタルと同様に、車椅子用電動アタッチメントのレンタルを考えれば、観光地や商業地でもハード面のインフラの整備を行うことなく障害者やその家族の利用促進が考えられる。また、規制の緩和で、福祉業界や製造業において、今まで皆無であった障害者用の新しいモビリティの開発や製造が促され、より国内に合った製品や世界に進出できる製品の誕生が期待できる。

 最後に海外で活用されている電動アタッチメントの例を紹介します。車椅子利用者の移動範囲を大幅に広げることが出来るよう、規制の緩和に向けて議論いただきたいと思います。




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